拒絶理由・国際出願・通常出願(論文必須添削講座 第1回)

論文必須添削講座は、ご自宅等で毎回1通の答案を作成していただき、提出された答案を添削する講座です。

論文必須試験合格者の声」でコメントを頂いているように、新橋ゼミでは、本試験に近い問題を厳選して出題しています。下記のダイジェストでその問題の一部をご紹介します。

第1回の講座は、「複数の出願人」、「国際出願」、「通常出願」及び「拒絶理由」等をテーマとした問題を出題しました。講座の一部を抜粋して公開します。

この問題は、実は難しくありません。複雑なだけです。
本質を理解して合理的に問題を解きほぐせば、漏れのない、かつ、スマートな答案が書けるようになるはずです。


【問題】
甲は、イ及びロを独自に発明した後、平成24年4月6日に、日本国において、明細書に発明イ及びロを記載し、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Xを行った。その後、甲は、ハを独自に発明し、平成25年4月6日に出願Xに基づいて適法なパリ条約の優先権の主張を伴う国際出願Yを、日本国を指定国に含めて日本語で行い、平成26年9月6日に日本国特許庁に対して国内書面の提出及び所定の手数料の支払いを行うことで、適法に国内移行手続を完了した(特許法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされた国際出願Yを「日本語特許出願Y1」という。)。国際出願Yの明細書及び請求の範囲には発明イ、ロ及びハが記載されている。
また、甲は、特許出願Xの前に、完成させた発明イの内容を全て開示して、発明イに関する技術相談及び製品化についての相談を発明イについて守秘義務を有する乙にしていた。
その後、乙は、独自に発明ロを完成させ、平成24年3月6日に、日本国において、明細書に発明イ及びロを記載し、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Pを行っていた。また、乙は、その後に独自に発明ハを完成させたので、平成25年3月5日に、明細書及び特許請求の範囲に発明イ、ロ及びハを記載して、特許出願Pに基づく特許法第41条の規定による適法な優先権の主張を伴う特許出願Qを行うとともに、当該特許出願Qについて出願審査の請求をした。
その後、乙は・・・

・・・以上のことを前提として、平成26年10月17日を基準として、以下の設問に答えよ。
ただし、発明イ、ロ及びハは、同一ではないが、特許法第37条に規定する発明の単一性の要件を充たす発明であるものとする。また、いずれの出願についても、出願公開の請求はなされておらず、問題文中に明記した場合を除き、国際特許出願でも、外国語書面出願でも、分割又は変更に係るものでも、実用新案登録に基づく特許出願でもなく、さらに、いかなる優先権の主張も伴わず、一度した優先権主張は取り下げず、いかなる補正もなされないものとする。

(1)・・・
(2)・・・
(3)甲による日本語特許出願Y1が、乙による特許出願によって特許法第39条の規定が適用されて拒絶理由が通知される条件について説明せよ。

【解答例】
設問(1)について
・・・
設問(2)について
・・・
設問(3)について
Y1が、法39条の規定が適用されて拒絶理由が通知される条件は、出願Q・・・が設定登録されることである。
1.出願Pについて
既述のように、Pは、Qの国内優先権主張の基礎とされているため取り下げられたものとみなされる(42条1項)。従って、Pは、先願の地位を有しないので(39条5項)、Y1は、Pによって法39条違反の拒絶理由が通知されることはない。
2.出願Qについて
Qに係る発明は、当初、イ、ロ、ハであったが、その後に、ロは削除されているので、イ及びハということになる。そして、法39条1項乃至4項の規定の適用については、イに関して先の出願Pの日を基準に判断され、ハに関して現実の出願Qの日を基準に判断される(41条2項)。同様の理由により、Y1に係る発明のうち、イに関してXの日を基準に判断され、ハに関してYの日を基準に判断される(41条2項)。
そして、イについては乙に係るPが甲に係るXの先願となり、ハについては乙に係るQが甲に係るYの先願となるから、Y1は、イ及びハに関し、Qが設定登録により先願の地位が確定すると(39条5項)、Qの存在を理由に法39条1項違反によって拒絶理由が通知される。
3.出願・・・について
・・・

以上


本講座の狙いは、アウトプットのドリルをすることにあります。小学生の頃などを思い出してください。計算ドリル・漢字ドリルなど、毎日のように宿題が出たかと思います。それと同じで合格までには、ある程度のドリルが必要です。

ドリルによる反復トレーニングを徹底的に行い、回答スピードの向上、ゼミ等の講義内容の記憶定着、そして、法律論文のスキル・センスを磨き上げます。講座が終了するころには、それまでとは全く別物のような答案が書けるようになっていることでしょう。

新規性(論文・短答基礎力再構築講座 第1回)

要点整理集」をテキストとして基礎固めを重点的に行う講座です。

第1回のゼミから「新規性」の部分を公開します。

この場面のポイントは、以下の3点です。
(1)「時分」基準の条文か「日」基準の条文かを意識して条文を読む(「時分」基準が原則)。
(2)条文番号&内容を即答レベルに覚える。
(3)理解すべき論点が多い分野である。

新規性は、短答・論文だけでなく、近年の口述でも非常に狙われやすい重要なテーマです。最初に正確な知識を身に付ければ、後の学習が大変楽になります。

期間の計算(論文・短答基礎力再構築講座 第1回)

要点整理集」をテキストとして基礎固めを重点的に行う講座です。

第1回のゼミから「期間の計算」の部分を公開します。

この場面のポイントは、以下の3点です。
(1)通常期間、不変期間、通常期間と延長、不変期間と附加期間、のように一見似ているものを区別・整理する。
(2)早い段階に条文番号&内容を暗記し、以後の勉強効率を高める。
(3)短答だけでなく口述でも狙われやすい分野である。

期間の計算は、弁理士の日常業務としても非常に身近なテーマです。ただ、身近であるがゆえに、盲点が多いテーマでもあります。この機会に総まとめしてしまいましょう。

基礎と初歩の違いとは?

論文・短答基礎力再構築講座の初回に、基礎と初歩の違いについてお話しました。

近年の弁理士試験では、「何となく分かっている」レベルの受験生がまずは短答試験でふるい落とされます。厳しいことを言えば、短答試験を突破できない方は、ご自身の理解レベルが未だその段階にあるということです。

短答試験で足踏みすることなく、最終合格に向って確実に歩みを進めましょう。

推奨したい答案構成プロセス(論文必須ゼミ 第1期第1回)

論文必須ゼミ第1期第1回では、

1.論文試験を突破するための3つの条件
2.合格者が採用しているルール
3.推奨したい答案構成プロセス

についてお話しました。

ダイジェストとして「3.推奨したい答案構成プロセス」の一部を公開します。

今年の論文試験の問題(特許I)を題材にし、”全ての論点候補をピックアップ”した場面です。この場面のポイントは、以下の4点です。

(1)論点候補を全てピックアップする気持ちで問題文を読む。
(2)問題文を読みながら、逐次、論点候補につきメモを取る。
(3)論点候補には、結果的にノイズも多く含まれることになるが、この段階では気にしない。
(4)論点候補のピックアップ漏れがないか、数回、問題文を読み直す。

このピックアップの後、ノイズ除去・漏れ防止の処理を済ませ、いよいよ答案構成に進みます。

[特許・実用新案]
【問題I】
日本国に住所を有する[①在外者でない]甲は、甘味料の発明イ及びロ[②単一性]をし、平成23年12月1日に、展示会において、発明イの技術的範囲に属する甘味料α(以下「α」という。)を無条件に入場者にサンプル配布した(以下「配布」という。)[③新規性欠如]。αは、外観からも、また、試食したとしても、発明イの技術的範囲に属するかを判別可能なものでなくさらに、甲は、αの内容に関する情報を一切開示しなかった[④現実に知られ、かつ、技術的に理解され][⑤新規性喪失の例外]
その後、甲は、平成23年12月8日、明細書に発明イ及びロを記載するとともに、発明イのみを請求の範囲に記載し[⑥単一性検討不要?][⑦補正によるクレームアップ?]、日本国特許庁を受理官庁として、日本国を指定国に含む[⑧自己指定]国際出願X[⑨国内移行(国内書面・手数料)]を英語[⑩翻訳文]で行った(特許法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされた国際出願Xを、以下「外国語特許出願Y」という。)。国際出願Xは、平成25年7月1日に国際公開された[⑪補償金請求権]
一方、展示会に入場した乙は、配布されたαを持ち帰り、平成23年12月9日に、半年前に購入した市販の分析器によりαを分析したところ、その分析結果は、αが発明イの技術的範囲に属することを判断できるものであった。
以上の事例を前提として、以下の設問に答えよ。なお、本事例においてはいかなる補正もなされないものとする[⑦’クレームアップ考慮不要]